II章:3Dプリンタのプロセスと造形方式
2026.09.263Dデータが部品になるまでの処理の流れと、ISO/ASTM 52900による造形方式の7分類を整理する。
要点
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(1) 3Dプリンタに共通の基本的なプロセスが存在しており、各プロセスに対応するツールが必要である。(II-i)
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(2) 造形方式は主に7種ある。造形したいもの(および設備コスト)に応じて選択される。(II-ii)
i 3Dプリンタのプロセス
1 処理の流れ
3Dデータが部品になるまでの流れは次のようになる。
FDM方式の場合を想定して整理しているが、他の方式でも概要は同等となる。
※下図3-1)の運動計算についてはホストPCで処理する方式である。制御基板のマイコンで都度処理する方式も存在する。
各プロセスに対してそれぞれ専用のツールが必要である。
目的や要求に従って異なるツールを選択し、組み合わせて一連動作させることが必要となる。
ただし、市販機の多くは、これらをすべて一つにまとめたパッケージ製品である。
| 段階 | ツール | 入力 | → 出力 |
|---|---|---|---|
| 1) 設計 | 3D CAD | 設計仕様 | → 3Dモデルデータ(STEP/STL/3MF) |
| 2) モデルのスライス | スライサー | 3Dモデル | → G-code(経路、速度、温度、サポート材の情報) |
| 3) 造形 | 3Dプリンタ本体 | ||
| 3-1) 運動計算 | ホストPC上の動作制御アプリ | G-code | → 時刻付きステップ指令列(先読み処理、加減速、共振抑制、押出圧補正の計算) |
| 3-2) 動作制御 | 制御基板マイコン | ステップ指令列 | → 指定時刻通りのパルス、ヒーターのPWM、温度の読み取り |
| 3-3) 駆動 | モータ、ヒータ | パルス、PWM | → モータ動作、ヒータ温度上昇 |
| 3-4) 成形 | メカ(ベルト、レール、押出機、ホットエンド) | ホットエンドの温度上昇、移動 | → 溶融樹脂の積層造形物 |
| 4) 後処理 | 人または周辺設備 | 造形物 | → 取り出し、サポート除去、検査 |
※3-1)の運動計算について、制御基板のマイコンで都度処理する方式ではマイコンに直接G-codeが入力される。
ii 造形方式の分類
1 造形方式7分類(ISO/ASTM 52900)と特徴
造形方式はシステム全体を左右する最も基本的な要素である。
方式の違いは、使える材料、精度、強度、装置価格、後処理の手間に直結する。
国際規格ISO/ASTM 52900は、積層造形(AM)の方式を、7つに分類している1。
| 方式(略号) | 原理 | 主な材料 | 代表的な用途 |
|---|---|---|---|
| 材料押出(MEX) | 材料をノズルから選択的に押し出す | 熱可塑性樹脂のフィラメント(PLA、ABS、ナイロン、PEEKなど)、炭素繊維・ガラス繊維入りフィラメント、ペースト | 試作、治具、機能部品。本レポートのIII章で扱うFDM/FFFはこの方式 |
| 液槽光重合(VPP) | 槽内の液状光硬化樹脂を光で選択的に硬化させる | 光硬化樹脂 | 高精細な試作、歯科、鋳造用の型 |
| 粉末床溶融結合(PBF) | 熱エネルギーで粉末床の一部を選択的に溶融・結合させる | 樹脂(結晶性の熱可塑性樹脂が中心)、金属 | 金属の最終部品、樹脂の小ロット量産 |
| 結合剤噴射(BJT) | 液体の結合剤を粉末に選択的に噴射して固める | 樹脂、金属、セラミックス、砂の粉末 | 砂型、金属部品(焼結工程を伴う) |
| 材料噴射(MJT) | インクジェットヘッドで材料の液滴を選択的に堆積させる | 光硬化樹脂、ワックス状の材料 | 多色・多材料の試作 |
| 指向性エネルギー堆積(DED) | 材料を供給しながら集中した熱エネルギーで溶融・堆積させる | 金属の粉末またはワイヤー | 大型金属部品、補修、肉盛り |
| シート積層(SHL) | シート状の材料を接合して積層する | 金属、紙、樹脂、複合材 | 限定的 |
分類表はWohlers Associatesの整理にもとづく1。コールドスプレーはこの7分類に当てはまらない例外とされている1。
材料押出(MEX)はFDMと呼ばれることが多い。以降FDMと記載する。
2 方式の選び方
造形したいものに応じた方式の選択が必要となる。例えば以下のような要素で選択される。
- (1) 金属の最終部品が必要 → PBFかDEDが候補
- (2) 表面の滑らかさと精細さが必要 → VPPかMJTが向く
- (3) 治具や機能試作を速く作りたい → FDMが最も手軽
また、FDM機や一部の液槽光重合(VPP)機が低価格で販売されている。
これは、成形する材質などの特性によって相対的に簡易に構成でき価格が安くできるという背景があると考えられる。
(量産効果によって価格が低下している側面もある。)
費用対効果の側面からFDMが選ばれやすい。
III章では、構成を最も細かく追えるFDM装置を例に、装置の中身を見ていく。
出典
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Wohlers Associates, "The Seven AM Processes". https://wohlersassociates.com/terminology-and-definitions/the-seven-am-processes/ ↩ ↩2 ↩3